映画と音楽126-ヒーロー・こうもり

昨日、銀座「スイング」、ヴォーカル西村協さんのライブ、ベースは旧知のジャンボ小野さん、ドラムに初共演の矢藤健一郎さん。

16時からリハーサルで譜面をおさらい、17時半から80分のステージ、トリオ演奏で「パディド」"Perdido"、「あなたと夜と音楽と」 "You And The Night And The Music"の後、協さんの歌。

いつもながら72歳と思えぬP話古名歌唱、いつもはリクエストも多く歌うが、「まんえん防止」で時間制限あり予定曲のみ。「ビギンザビギン」「クワンドクワンド」他14曲程熱唱。久々の再会共演、大いに楽しい夜だった。

 

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映画と音楽126-ヒーロー・こうもり
60年代後半、新作映画など大都市より何か月か遅れて地方公開が普通だった。

米国テレビシリーズ「バットマン」も少年雑誌に放映情報はあっても福井では何か月か待ち、昭和の小学生は我慢が多かった。
このテーマ曲がニール・ヘフティー作曲と知ったのは20歳過ぎてから、カウント・ベイシー・オーケストラのアレンジャーとして有名で、"Li'l Daring"(オルディーズ曲とは違うジャズ曲)も作曲、ジャズファンにはお馴染み。

 

北村英治さんがアメリカのジャズフェス出演の折、楽屋通路で「あなたの演奏が素晴らしかった」と声をかけられ「ありがとう」と、出演者には見えないが随分気さくなおじさんだと思った。
「私はアレンジやるんだ」と差し出した名刺を見ると、Neal hefty、驚いて「えっ、あなたがあの有名なヘフティーさんですか!」と言うとニコニコ。
脇にいた北村さんマネージャー「えっ、本当に!」、小柄な若者に見えたのだろう、ヘフティーさん「君も私のこと知ってるの?『バットマン』作曲したんだよ」とニコニコ。
北村さんが「"Li'l Daring"もですよね」と言うと、「あぁ、あれは最初軽快なテンポで作ったんだけどワイフが遅い方が絶対いいって言ったんだ、それでベイシーの十八番になった」、貴重なお話を伺った。

 

バットマン」リメイク映画を何作か見たが、テーマ曲も新たに60年代より幾分重い印象が強い。

 

 

 

 

映画と音楽125-ヒーロー・くも2

本日、銀座「スイング」、ヴォーカル西村協さんと、とても久々の共演。

ベースにジャンボ小野さん、ドラムに矢藤健一郎さん。

有料動画配信申込はスイングHP本日ライブページにあります。

「まんえん防止」受け、ライブ時間は、18:30~19:50 20:00閉店。

 

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映画と音楽125-ヒーロー・くも2
スパイダーマン原作を制作した「マーベル社」の創業は1930年代末で、その後ディズニー傘下となり最近「アベンジャーズ」もヒットした。
それらの作品に共通してニューヨークを象徴する高層ビル「クライスラービル」(昨日のイラスト)が登場、創業当時のマーベル社も同じ42丁目通りにあったそうだ。

 

高校時代にスパイダーマンの米国アニメ版が放映されていた。テーマ曲はジャズっぽく男女コーラスで日本語歌詞。
〽ビルの谷間・・・おおー、クモ人間だ~(中略)、ああカッコいい~
・・・正直、かっこいいと思えなかった。

最近ユーチューブで初めて原曲の英語バージョンを聴いた、カッコ良かった。
メロディーもアレンジも同じで男女コーラス、そこは日本でも忠実にカバー。
作曲はボブ・ハリスと馴染みないが「シング・シング・シング」や「スイングしなけりゃ意味がない」に通じるジャズっぽい雰囲気、英語詩がポール・フランシス・ウエブスター、あの「慕情」の作詞者だった。

 

放映当時福井に住んでいて番組スポンサーは「サンヨー薔薇チェーン」、街の個人電気屋さんでチェーン加盟の複数店舗で共同だった。
フィルム映像で電気屋のおじさんが商品テレビの横に立ち、「〇〇町の〇〇電気です。テレビはサンヨー、リモコンはズバコン」とコメントする実に素朴なCM。

 

それから40年余り、リメイク映画シリーズは全てが新しくテーマ曲も凝った曲、スパイダーマン正体男性のスマホにも今を感じた。
その着信音がなんと往年アニメテーマのメロディーで、瞬間時代をワープして電気屋のおじさんと〽ああカッコいい~が蘇った。

映画と音楽124-ヒーロー・くも1

kumo2016年公開「スパイダーマン3」(2016)映画館に観ったが、ジャズが使われていたのは意外だった。
前半、スパイダーマンの正体は男子学生で、デートでジャズクラブに連れて行った彼女「こんなとこ初めて」、ニューヨークの若者もジャズは馴染みがないだろうと思った。
ステージで演奏が始まりイントロのフレーズで「あ、あの曲か」だったが、ヴォーカルが歌い出しそうなところでダンスシーンとなった。

あの曲とは"Fever"で、始めて聴いたのはプレスリーのテレビ世界同時中継によるハワイライブだったと思う。
曲はシンプルなフレーズの繰り返しだがブルージーでかっこいい、恋に熱くなる歌でプレスリーが"fever!"と腰をひと振りドラムがズドン、客がキャー!
後年、プレスリー以前にペギー・リーが歌ったことを知った。

 

映画では彼女役の女優が"I'm Through With Love"を歌う。
1931年の曲、私はナット・キング・コールのピアノ弾き語りで覚えた。
映画「お熱いのがお好き」(1959)ではモンローが歌っているが、恋はもうこりごりの歌詞で失恋に重なるシーンで使われることが多い。

 

この映画から3年程後に、初めてのニューヨーク旅行に行くことになりライブ事情を調べた。
現地に住んでいた演奏家に聞いたりネットでも調べたが、主流はコンテンポラリージャズで私好みのスイングやスタンダードジャズを聴けるところは稀、わずかな滞在で出合うことはなかったが街の雰囲気は大いに楽しんだ。
あの摩天楼風景からスパイダーマンも生まれたわけか。

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映画と音楽123-譜面とアラ

1980年代に入って家庭用ビデオが普及、それまでテレビ放映かリバイバル上映でしか見られなかった名作映画が何回でも見られるようになると、知られざるアラ発見も話題になった。

アラン・ラッド主演「シェーン」の前半、荒野の向こうに走る路線バスが映り込んでいる、「ローマの休日」のスペイン階段で数分のシーンがカットが変わると時計台の時間が大きく進んでいる。

雑誌記事やライブのお客様からお聞きしたり、私も発見することはあった。

 

映画「グレンミラー物語」主演のジェームス・スチュアートが「ムーンライトセレナーデ」作曲するシーンで凄い勢いで譜面を書く。
20歳前に映画館で観た時は猛練習したのかと思ったが、ビデオ時代になってよく見ると五線紙に薄く下書きが見えた。

「愛情物語」を始めて名画座リバイバル上映で観た時、あまりにタイロン・パワーの手と吹き替えのピアノ(カーメン・キャバレロ)がピッタリで感動したが、ビデオで何回か見ると何か所かずれていて、ピアノの鍵盤と顔が同一画面に映るありえない位置関係にも気付いた。

フレッド・アステアの映画でタイトルも相手女優も思い出せないが、ダンスシーンで女性のスカートが後半キュロットになっていた。

 

昔のことかと思ったら2000年以降作品のアラを集めたサイトもあり、機械は発達しても人の手作り感は変わらず。
編集で後年消されることもあるようだが、知ったとて感動は変わらず、魚のアラにも似たお楽しみに感じる。

映画と音楽122-譜面と普通

例えば料理人は初めて食べる味でも舌でレシピを想像でき、画家は目にした対象を即座に描けるように、ジャズ演奏家は知らない曲でもワンコーラス聴いてコード進行を把握しアドリブ演奏するのは「普通」のこと。

と言っても何でもという訳でもなく、例えば私と北村英治さん共演の「ボナセラ」や「チャタヌガーチューチュー」など通常取り上げることも稀な曲で、聴いて把握するのも難しくゲスト共演者に譜面を用意する。

 

世界的テナーサックス奏者スコット・ハミルトンさんとの初共演は北村さんのあるコンサート、リハーサルはあまりにも簡単に終了して楽屋へ。

「ボナセラ」他バンドの曲をリハーサルしておらず、北村さんに「譜面は?」と聞くと「あぁ、彼は大丈夫だよ」と一切用意せず。

お二人が旧知の仲とは言え本当に大丈夫なのかと思った。

 

それが本番開始するとまるで普段共演しているかのような見事な演奏、これほどの共演者は初めてで私の「普通」を大きく超えていた。
膨大な曲の情報を記憶し、聴いた音を瞬時に記憶分析して対応する能力がずば抜けている、しかもそのフレーズは素晴らしく魅了する。

 

スコットさん譜面初見が苦手とのことだが、それをカバーして余りある力。
昨日、ウエスモンゴメリーが譜面読めなかった話が半信半疑だったと書いたが、こういう能力をして成し得たことと理解、貴重な体験だった。
スコットさん米国出身で長年ヨーロッパに住み活躍、しばらくお会いしていないがコロナ禍をどう過ごされているだろう。

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写真は2018年冬

映画と音楽121-譜面と名演

昨日、北村英治さんの92歳のお誕生日、メールにうっかり「93歳おめでとうございます」と送信、マネージャー代筆メール届き「『わしはやっと92歳になった若者で、そんなに年はとってない』と言ってます」と。

慌ててお詫びメール、私の方がボケでどうするのと・・・(汗)。

食欲旺盛でとてもお元気で過ごされている様子も伝えてくれた。

 

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映画と音楽121-譜面と名演
映画「五つの銅貨」でコルネット奏者役のダニー・ケイサッチモルイ・アームストロング)のステージに上がり、譜面を出すとサッチモは目を丸くして見るが上下逆さまで直される。ジャズの一面を描いたシーン。

 

ジャズギタリスト、ウエスモンゴメリーが譜面を読めなかった話は有名で、晩年CTIレーベルに録音したアルバムのアレンジャー、ドン・セベスキーの本に興味深い話があった。
『ウエスへの強いリスペクトから意気込んで譜面を書き録音開始したが、演奏はしどろもどろで何が起こったかと思った。
譜面に弱いことを悟り、急遽自由なバンド演奏に切り替えると見事、後日その録音を元にオーケストラアレンジを書きなおしてダビング、ヒットアルバム"A Day In The Life"が生まれた』
この話を読んでも、全く譜面を介さずジャズを習得しあの名演に至ったとは信じ難く、仲間と誇張した話じゃないかと。
それが誇張でないことを理解するのは40代半ば過ぎて。

世界的テナーサックス奏者スコット・ハミルトンさんは北村英治さんと旧知の仲で、私は50歳そこそこの頃に初共演、デビューアルバムを買った演奏家でかなり大きな期待と緊張があった。
ずっと年上と思っていたら1歳違いと知り、穏やかで温かい人柄に幾分緊張も和らいだ。


リハーサルは北村カルテットで軽く2曲ほどの後、スコット参加し「枯葉」、音が出た瞬間「あ、レコード同じだ」と素朴な感動、2~3曲軽くやって終了。
楽屋に落ち着くと北村さん「こっちの曲にも参加してもらおう」、しかしリハーサルではカルテットのアレンジなどおさらいをしていないので、譜面を用意する必要があるのだが・・・続く。

 

映画と音楽120-譜面を読む

昨日、譜面の読み書き出来なかった大作曲家の話を書いたが、チャップリンも同じく専属の音楽家に採譜編曲を頼んで、「モダンタイムス」(1936)の"Smile"「ライムライト」(1952)の"Eternaly"、など今も世界中で親しまれる名曲を残した。
私は一応譜面の読み書きは出来るが、初見でパッと見て弾くことは苦手。

 

若い頃NHKの録音仕事で、譜面はジャズ曲中心でアドリブ部分も多く無事終了。

譜面を書いた若い女性アレンジャーから、クルト・ワイル作品特集ライブの演奏を依頼された。
「マックザナイフ」「セプテンバーソング」などで知られるが、米国に亡命する前はドイツでクラシック作曲家として活動。

その時代の作品を弦楽4重奏とピアノにアレンジした譜面のライブだと聞いて、これはクラシックの分野で私は無理と伝えると「あれだけ弾けるのだから」と。

このアレンジャーさんも若く、その事情に詳しくなかったのだろう「譜面を送りますから一度目を通して下さい」。

どさっと届いたのはアドリブなどない譜面、知り合いのクラシック・ピアニストを紹介した。


ライブにご招待頂いてリハーサルから客席で拝聴、紹介したピアニストは難なく演奏したが、アレンジャーさん「『セプテンバーソング』を追加したい」と突然の思い付きにピアニスト「譜面がないと無理です」と。
すると客席の私に向かって手を合わせ「お願いっ!」。本番では「本日のサプライズ」と紹介され1曲だけ演奏。

アレンジャーさんのお人柄を伝える意味であえて書かせてもらうが、「セプテンバーソング」に対するお心遣いを頂いたことに感謝した。