芸事6ーお琴

季節外れの話題になるが、まだ若手だった頃に正月の仕事で雪山のリゾートホテルに行った。

ジャズバンドでの出演だったが、お琴の奏者も来ていて1曲共演を頼まれた。

予定になく共演に至った経緯を思い出せないが、リハーサルもなくぶっつけ本番だったことは覚えている。

 

伝統筝曲「六段」でピアノ譜面はあったが、初見に弱い私が引き受けたのは多分シンプルなアレンジだったからだと思うが、邦楽の知識もなく無茶な話。

何が無茶なのかと言うと、譜面の頭が6小節休みになっていてメロディーも書いてない。

ジャズはセーノで出たらテンポ通り行くから、1・2・3・4 / 2・2・3・4と6小節分数えれば良いが、邦楽はテンポが一定していないので、1.2.3.4の勘定が分からず1小節目か2小節目か分からない。

お手上げ状態のはずだったが、幸い曲の前半を知っていたことと琴奏者も目で合図してくれたので出だしを外すことなく、なんとか無事に終えられた。

 

母が娘時代にお琴を習っていて正月にテレビで流れる「六段」を懐かしがっていた、その記憶があったのだろう。

最近の正月は「六段」を耳にしなくなったが「春の海」はスタンダードとして健在だ。

作曲者の宮城道夫は明治から昭和にかけて活躍した筝曲家で、西洋音楽の要素を邦楽に融合して、17弦琴やピアノの音域をもつ大型琴(本人以外継承されなかったそうだ)など楽器改革もしており、この「春の海」もピアノで弾き易い。

中学時代の音楽教科書に、フランス人ヴァイオリニスト、シュメーと共演する宮城道夫の写真が掲載されていたのが印象的で、授業のレコード鑑賞で好きになり母にレコードを買ってもらった。

 

自分で演奏したのはずっと後、40代半ばに中国人二胡奏者チェンミンさんとの共演で、中学の教科書を思い出した。

その後日本人クラシックのフルート奏者とも共演したが、いずれも正月だった。