昨日、寄席で子供が発した言葉に即応した前座さんの機転を書いたが、こういうことはジャズライブでもままある。
50代半ば頃からクラシックのフルートとチェロと共演による、毎夏の定例公演が数年続いた。
ジャンル違いのいいとこ取りでクラシックやジャズ名曲を選び、アレンジからリハーサルを念入りに積み上げ、トークもおおむね台本を作った。
ある年「クルーズ」をテーマに海や星など関連した選曲で、私のクルーズ体験トークを皆さん静かにお聴きになっていた時、客席で携帯電話の呼び出し音が鳴った。
とっさに私は携帯を鳴らした人がどれほど焦っているかと思い、「船に乗っているといろんな音が聴こえてきますが、携帯が鳴ってくれるのは陸の附近だけ、これが外洋に出ると圏外になります」とアドリブで会場が和んでくれた。
ジャズ演奏家なら私でなくとも日常的なアドリブだったが、終演後にクラシックのお二人から「あの瞬間どうなるかと緊張しましたが、あのトークはお見事でした。クラシックの演奏会だったら大変でしたよ」と。
音楽の演奏中に予期せぬ音はあるものだが、1950~60年代活躍した前衛音楽家のジョン・ケージの作品に有名な「4分33秒」がある。
昔テレビで本人の映像を見たことがあるが、街の広場に置いたピアノは鍵盤のふたが空いる。
周囲を人が取り囲むところにケージが登場して座ると鍵盤のふたを閉め、黙って座って4分33秒で終わるパフォーマンス。
これは、その時間に聞こえる周囲の音の全てが作品というわけで、コンサートホールでも上演されている。
演奏中の予期せぬ音といえば、こんな思い出話が・・・、続く。