今はジャズライブで奏者が酒を飲むことも稀で、若手演奏家はほとんど演奏中の飲酒はしないが、1970~80年代のライブ出演ではウイスキーなど飲りながら演奏するのは当たり前だった。
下戸は別として、この時代のジャズ好きなお客にとって「ジャズ・酒・タバコ」が三種の神器、ある方の言葉が忘れられない「ジャズのアドリブは即興で何が出るか分からない、そこに瞬間を生きる喜びを感じる」と。
高度経済成長の勢いの中、お客も飲みながらの演奏を求め、こちらもそれに応えるような一体感があった。
当時ジャズが難解な方向へと突き進んで、一般的には「ジャズは難しい音楽」と敬遠される傾向にあったが、私はジャズの大衆的な魅力を表現したいと思っていた。
先輩との共演ステージで曲間のトークをお客が楽しむ様子に、これは自分もやらねばと思った。
ところが本来緊張し易い性格でまともにしゃべれず、お酒で緊張をほぐしてやっと、ある時はサングラスまでかけた。
その一方で、寄席も好きでちょくちょく行っていたので、噺家さんに刺激されてジョークを盛り込みたいと思った、が、緊張して噛みまくる、お酒を飲むと饒舌になって受けた。
それが時に空回りしてお客の反応が得られないと「自分のステージはつまらないに違いない」と演奏も一緒くたにして落ち込んだ。
緊張と緩和のバランスが上手くとれない日々が続き・・・続く。