芸事16-緊張と緩和

30歳に入った頃に片頭痛が出だした。

右側の頭から顔にかけて鈍痛から始まってズンズンと痛みが増し、ひどい時は顔が青ざめるほどだった。

医者の診察で「年齢的に会社員だと上下関係のストレスも考えられますが、ご職業は?」と問われ演奏家だと答えると「好きなことが仕事であれば何でしょうね?」、別の医者も同じく原因不明で、鎮痛剤を携帯するようになった。

 

人からはそう見られないが本来緊張し易い性格で、演奏とトークが受けるかどうかの緊張は大きかった。

受けたらしめたものだが、お客の反応薄いと「私のステージはつまらないんだ」と焦る。

アルコールで緩和するとトークもなめらかになり演奏も勢いづく、その一方で片頭痛が出ると怖いから鎮痛剤も服用した。

医者の見立て通り「好きでやってる仕事」にストレスはないと自分でも思っていたから、芸事の焦りがストレスと気付くのは随分後だった。

 

アルコールと鎮痛剤が体に良い訳がなかったが毎日ではなく、ホテルやイベント仕事は車だったのでお酒は飲まなかった、が、鎮痛剤は常時携帯して鈍痛が来そうになると飲んだ。

この時期がどのくらい続いたか覚えていないが、ある日、「お笑いの芸人でもないのだから、トークは演奏に必要なことをしゃべれば良い」と、ごく当たり前のことに気付いた。すると・・・続く。