言葉3-ちゃんで記憶

ステージでのメンバー紹介は、馴染みの人なら何のストレスもないが、初対面やつきあいの浅い人はピアノにカンペを置いて間違えないようにしている。

それでも、長年のトリオ仲間「ベース酒井一郎」「ドラム八城邦義」が口に馴染んでいて、違う人を「ベース、さか・・・」と言いそうになることはあった。

事前に暗記したつもりでも本番となると緊張することは何年やっていてもある。

 

水森亜土さんはこれが苦手だった。

随分以前、松島憲昭さんというベーシストの名前を私に「ま・つ・し・ま・さんよね」と何度も確認した。

いざ本番でメンバー紹介、「ベース・・・ベース・・・、き、きたじまさぶろう!」と、どこから出て来たのか大物歌手になっていた。

ドラマーが日高弘さんの時は惜しかった、「ドラム、ひ、ひだか・・・ひだかこんぶ!」と北海道名産品になっていた。

天然かジョークか分からぬ所をお客様は楽しんでいた。

 

その割に不思議と知人の名前はよく覚えていた、と言ってもフルネームでなく「〇〇ちゃん」として。

日常的に会う人はまだしも、久々に会う各地の知人でも性別問わず若者から高齢者まで全員「ちゃん」で覚えている。

私の郷里に行った時も亜土さんは初対面の「ナオミちゃん」を半年以上後も正確に覚えていた、が、その方の苗字を言うと「それ誰?」。

多分、フルネームの記憶にはストレスがあって、「〇〇ちゃん」で記憶保存されるのだろう。