言葉5-隠語

ジャズ界のさかさ言葉が戦前から使われていたのか、ルーツは何か、91歳の北村英治さんも分からないが、業界用語として多くの人が共有していた。

 

膨大な単語をここに上げることはしないが、ほんの一例として音楽関連で、ズージャ(ジャズ)、ダンモ(モダン)、シーデキ(ディキシー)、ヤノピ(ピアノ)、スーベ(ベース)、ターギ(ギター)、ナーテ(テナー)、パツラ(ラッパ:トランペット)、ボントロ(トロンボーン)など。

何でも逆さではなく、ドラム「タイコ」、アルトサックス「アルト」など規則性があった。

 

数字も1オクターブの音階を引用し、クラシックのドイツ語とジャズの英語を混合していた。

f:id:nemannekenarui1955:20201011051345j:plain「シ」をジャズでは”B”だがクラシック風に”H”(ハー)、これが全て英語風にD(ディー)、E(イー)、A(エー)、B(ビー)だと聞き違いの可能性から金額や楽曲のキーの特定に支障もあるので、上手く出来ている。

例えば金額が二千五百円だったら「デーセンゲーヒャク」で「円」は省略、8は「オクターブ」で「八千円」だと「オクターブセン」、「一万八千円」だと「ツェーオク」と略した。

 

キャバレーなど多かった時代、全国のバンド同士がこういう言葉で会話していた。

時代と共にバンド廃業して転職した人も多く、仲間のこんな話がある。

地方へのビータ(旅)で食事に寄ったバンド、料理の味を「ズイマ」(不味い)と口々に言い、リーダーが支払いで店主に「全部でいくら?」と聞くと、「はい、デーセンゲーヒャク」と言われてぞっとした。

つまり、店主は「ズイマ」も当然分かって、わざとバンド言葉で金額を言った。

「どんな言葉でも人に聞こえる悪口は言うものじゃない」との教訓を得たらしい。

続く。