深夜からの豪雨が田園の緑と空の境を曖昧にしている。これまでの人生でベランダ越しに自然が広がる風景は初めて。
40代前半、二胡との初共演で中国曲「彩雲追月」のアレンジで、当時中国に行ったことがなかったので、水墨画の心象風景にジャズエッセンスを融合させた。
完成したアレンジを二胡奏者チェンミンさん「子供の頃に中国の農村イメージが強かった曲が、素敵な印象に変わった」と、とても気に入ってくれて演奏。
その頃ジャズの仕事で福井を訪れ、山に低くかかる雲の風景を懐かしく見た瞬間「あ、これだったのか!」、中国をイメージしたつもりが実は郷里の自然だった。
二胡共演で日本曲「砂山」のアレンジも、浮かぶ風景は子供時分から馴染んだ郷里の浜辺風景。
演奏家として日本や海外の風景を多く見たが、郷里の自然が心に深くあることに気付いた。
Uターンは望郷の思いからでもなく自然な流れと思っているが、己の気付かぬ何かの力か、怪奇現象ならぬ回帰現象のような・・・。