これ一枚

このところこのブログは「昭和懐古ブログ」とタイトルした方が良いような話題が続いているが、今日もまた更にお古い話で恐縮。

昨日、銀座「スイング」、北村英治4+中川善弘TP+中川英二郎Tb。補助椅子も出る超満席。
知合いのお客様からカルテットの皆さんにと頂いたプレゼントは、小さな羊の起き上がり小法師袋のシールに”Ito-ya”とあるのに気づいて、北村さんに「あ、これ伊東屋ですよ。北村さんがセンチメンタルオーバーユーのレコード買った辺りですね」と。

伊東屋は銀座では老舗の文具専門店で、三越から松屋の並びにある。
終戦まもない頃、この通りに露天商が並んでいたそうだ。学生だった北村さんが伊東屋の前を通りかかり、得も言われぬ良い音楽に足を止めた。
蓄音機で回るレコード盤を前に店主が、「いい曲だろ。もうこれ一枚しかないから買うなら今だよ!」と言われて即買った。
トミー・ドーシー楽団の"I'm getting sentimental over you"「僕はセンチになったよ」
夢中で聴いて、貴重な「これ一枚」の幸運を喜んだ。
翌週同じ場所を通ると、また同じ露天で同じレコードがかかっていた。「あれ一枚だったはず」と思ったが、良い音楽を知って腹はたたなかった。

北村さんがステージでその話をするのに、終戦直後の銀座をご記憶の方が少しはいらっしゃるかと思いますが・・・」と切り出したが、頷かれるお客様はほとんどお見かけしなかった。
話が終わって、「センチメンタルオーバーユー」を御年40歳の中川英二郎さんが見事に演奏。

さて、本日は池袋「ばがぼんど」ソロ弾き語り。こちらの客層はぐっと若い、と言っても平均45というところだが。ぶらりお立ち寄りください。