夜来香(イエライシャン)

昨日、東銀座「俺の揚子江」、酒井一郎さん(B)、秋葉正樹さん(Dr)のトリオ出演。

今まで、中華料理だからといってもろ中国語の歌は、ジャズの中で突然雰囲気が変わるのではないかという思いからやらなかった。

本番、以前20分4回ステージが平日30分3回となって、昨日2回目は満席、中高年の方もいらした。
やってみようかなと思い「夜来香」をボサノヴァのアレンジで弾き語り。
けっこう受けた。

この曲が生まれたのは1944年、世界的にジャズが流行していた時代だ。
作詞作曲リー・チンクワン氏は、上海で子供の教育者として音楽活動をしていた。
当時日本では戦時下の文化統制で、作曲家・服部良一は上海へと渡ってリー氏との親交が生れた。

洋風なメロディーとルンバのリズム、当時流行の味わいを取り入れたアレンジで、李香蘭によってレコーディングされ日中間で大ヒットした。

ところが、大陸が中華人民共和国となると、この曲も含めて多くの曲が思想的理由から禁じられた。
長い年月を経た1980年に入る頃、改革開放政策で鎖国的体制が緩和され、台湾からテレサ・テンの歌う「夜来香」「何日君再来」が入って来た。

革命的思想を称える音楽一色だった日常に、優しい歌声のラブソングはたちまち大陸の人々の心をとらえた。
政府は慌てて「退廃的な歌」として禁じたが、当時、輸入された日本製カセットプレーヤーが大人気となり、コピーによって瞬く間に広まり、遂に政府も容認せざるを得なかった。

こうして、中華圏に大スタンダード曲として蘇った「夜来香」だったが、2000年、中国二胡奏者と上海でのコンサートでは日本人の演奏は許されず、バンドリーダーでもある私は大変複雑な思いを抱いた。

現在の大陸事情は分からないが、そんなことがあって、昨年の台北コンサートで強い思いから、「きっと皆さんご存知の曲です」とタイトルを告げずに弾き語りを始めると、お客様も一緒に歌い出して私自身大いに感動した。
国家体制の違い、様々に難しい。

                    台北コンサートでの写真
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