歌と伴奏

フランスのシャンソンやイタリヤのカンツォーネは、それぞれ「歌」の意味、つまり歌が主役で伴奏楽器は脇役だ。
それに対してジャズは楽器と歌のどちらも主役的にからみあう面白さもある、が、それでも歌と伴奏は主と脇の関係がベストだ。
 
時に、その脇が主の意に沿わぬこともある。
 
例えば、アーヴィンバーリン”Cheek tocheek”、ワンコーラスが他の曲よりも長尺のなので、インスト(楽器演奏)の場合は各部分ごとにリズムに変化を持たせるなど工夫をすることもある。
 
その同じやり方で歌の伴奏をすると、各部分ごとの変化が歌の邪魔になることもある。
歌う方としては、歌詞とメロディーに十分変化がある名曲にその細かい変化は不要なのである。
 
スローナンバーとひとくちに言っても、曲によってスイングする、あるいはスイングせずにしっとりと、など、曲によって違う。
 
事前に打ち合わせが出来れば良いが、以前こんなことがあった。
初対面メンバーとのライブ中、”What awonderful world”「この素晴らしき世界」のリクエスト。メンバー諸氏OKということでイントロを弾き歌い始めた。
 
いつも通りしみじみ路線で歌っていたが、ドラムとベースがじわじわ盛り上げ路線に。間奏でテナーサックスがソウルフルに、ボヘーーッとノリノリにブロウ・・・。
完全に意に沿わぬ流れとなって、「何でこうなるの?!」。
 
このように、演奏者と歌い手とのイメージが違うこともあって、それが予期せぬ好結果となればジャズならではの儲けものともなるが。
 
歌う立場で述べてみたが、私もピアニストとして歌手の意に沿わぬ伴奏をしてしまうことがあるかもしれない。
その辺りに気を配りつつ、さて本日は初対面の歌手・吉村樹里さんとの共演。
ピアニストとして、俺のイタリアン JAZZ」に出演。