落語由来

北村英治さんが88歳過ぎてもなお素晴らしい演奏をされていることは、このブログに度々書いているが、最近、「お元気ですねぇ」と言われるとご本人、「えぇ、因果と丈夫で」と答える。

これ、古典落語の「寝床」に出てくるフレーズだ。

義太夫に凝っている商家の旦那が、店子(旦那は長屋の大家でもある)を集めて聴かそうと番頭を呼びに出す。
ところが長屋の連中は旦那の歌がすさまじく下手なので来ない。

番頭さん、旦那に一人一人の言い訳を述べて全員N.Gだと告げると、ならば店の者だけ集めようと。
しかし番頭、これも阻止せねばとの正義感から、やれ腹痛だ頭痛だ、怪我だと思い付くだけの言い訳をして全員N.Gを告げる。

そこで旦那「じゃ、番頭さん、お前はどうなんだ。どこか体が悪いのか」と、そこで初めて最後に自分一人残るという事実を突きつけられて、絞り出す言葉が「いえ、その、私は因果と丈夫で」。

この後に怒涛の旦那ライブシーンへ展開する、前後半の境となる最も印象的なこのフレーズが好きだ。

それを北村さんが口にする瞬間が、何とも洒落がきいてて楽しいのである。