センセイ

先日、クラリネットの谷口英治さんと共演時、彼が「ある演奏でアメリカ人が参加していて、何故か『マイメランコリーベイビー』はやりたくないって言ったんですよ」
 
”My melancholy baby”
ベニー・グッドマンも演奏していて、歌詞は♪ここにおいで悲しげなあなた、キスで涙をぬぐってあげよう♪という甘いラブソングで、北村さんとも時折演奏する。

40年近く前のある日、マット・デニスの弾き語りアルバムを買った足で、友人と会って飲むことになった。
友人が連れて来たアメリカ人は日本語が流暢でジャズにも詳しく、買ったばかりのレコードを見せた。
 
アルバムのジャケット写真、ピアノに座るマット・デニスにカクテルグラスを持った女性が寄り添って、”Play melancholy baby”とある
 
その外人さん、「このジャケットの意味分かりますか?」と聞くので、私「えーっと、メランコリーメイビーをやってくれ、かな?」

彼が「英語の意味はそうだけど、この写真を日本語で言うと、えーっと・・・、『センセイ、ギンコイやってよ』って感じ」
 
「ギンコイ」とは昭和歌謡で大ヒットした「銀座の恋の物語」のこと。
当時のカラオケはキーを自由に変えられず、酒場には「先生」と呼ばれるソロピアニストがいて、弾き語りも客の伴奏もありで重宝されていた。

この歌にマット・デニスは自作のヴァースを付けて、
♪お客はたいてい『エンジェルアイズ』か『マイメランコリーベイビー』をやってくれない?と言う、承知しました、と答えて・・・♪と歌い出す。

つまり、酒場で酔客がリクエストする定番曲、ピアニストからすれば「またこれか」と、そんなニュアンスか。
 
このアメリカ人のあまりにも見事な解説を思い出して、谷口さんに話すと、「ああ、成程!そういうことかもしれませんねぇ」と。

イメージ 1