記憶の前

昭和20年代、敗戦とともに進駐した米軍、各地の建物を接収して軍関連施設を設けた。リアル体験者である北村英治さんのお話。

「オフィサーズクラブ(将校クラブ)やシビリアンクラブ(軍関係の民間アメリカ人)は白人が多くて、スタンダード曲やスイングスタイルが喜ばれるんだけど、E.Mクラブ(下士官兵)は黒人も多くて「ビバップ」を喜ぶ、当時新しいスタイルだったからね

僕はもっぱらオフィサーかシビリアンだったから、スタンダードばかり演奏出来て楽しかった。
 
進駐軍の中には上手い演奏家もいて、特にハンプトン・ホースは凄かったね。

あれは銀座だったかな、南部三郎さんと演奏していた時に、いきなり「俺にピアノ弾かせてくれって」来たんだよ。

どういう人か知らなかったんだけど、どうぞって、ところがソロでピアノ弾きだしたらもの凄いんだよ。
聴いたことがない音使いで、何弾いてんだか分からない、みんな唖然としたね。

バラバラーッと弾きまくって終わりのメロディーで、あ、コールポーターの”What is this thing called love”弾いてたのかって分かった。

他にクラリネットサキソフォンの上手い人から教わったり、面白い時代だったね」

ハンプトン・ホース、私もジャズ覚え始めの頃にレコードを買った有名モダンジャズ・ピアニストの一人。

さて、本日は銀座「俺のフレンチ銀座コリドー街」にソロ出演。

バラバラーッと弾きまくって一同唖然、というのはなく、ひたすら心地よいスタンダード曲を弾き語りを交えて、猛暑も忘れるひとときを。