35年近く前、20代後半にジャズコーラスグループで成田空港に近いホテルの仕事に行った。
確か3日間のイベントで2泊したと思う、演奏終えた後はラウンジで寛いで下さいとのご好意。
夜、カウンターには我々とバーテンさんだけ。
カウンター越しの正面は広い窓、周囲は真っ暗で少し離れた空港の灯りだけ、天井から下がったテレビモニターにフライトインフォメーション。
当時は今ほど安価に海外に行ける時代でもなく、我々も行ったことがなかったからテレビに表示された世界各国の行先を見て、憧れを肴に飲んだ。
空港からフーっと飛び立つ飛行機の灯り、テレビモニターの一列がスッと消えた。
「ハワイに飛んでったんだ。いいなぁ、行ってみたいなあ」と。
インフォメーションがひとつまたひとつ消えて、遂に画面に何もなくなってラウンジを出た。
その番組の終わりに海外フライト情報のナレーションも憧れを強くした。
その後は誰もが簡単に海外に行く時代となり、私も仕事であちらこちらと行く機会が増えた。
それでも、若き日の成田のホテルラウンジとラジオ番組で抱いた憧れが強く記憶に残っているのは何故だろう。
少年時代に好きだった音楽を今聴いてもワクワクする気持ちと似ているのか。