映画と音楽38-赤い風車

昭和において、電話の声だけで知る人と実際会って想像と違ったことはよくあった。
映画音楽も同じで、曲に馴染んだ後「こういう映画だったのか」は多い。

パーシーフェイス・オーケストラで覚えた「ムーランルージュの歌」が好きで、時折演奏した。ジャズというのでない、往年のホテルラウンジ、或いはFM番組「ジェットストリーム」に相応しい。

何年も経って観た映画「赤い風車」(1952)"Moulin Rouge"が、画家ロートレックの伝記とは思いもよらなかった。

 

19世紀後半、フランス貴族の家に生まれるが子供時代に事故で足の発育が止まり、絵を描くことに没頭、父親との確執もあってパリに出て画家となる。
大きな赤い風車が看板のキャバレー・ムーランルージュが大人気で、ロートレックは連夜通い、ショーの踊り子、歌手などを描く。
この中で歌われるのが「ムーランルージュの歌」"The Song From Moulin Rouge"。

店のポスターを斬新なデザインで描き、単なる宣伝ビラをアート作品にしたと評価される。
障害者差別、失恋、父との確執などからアルコール依存症となり36歳で早世。
フレンチカンカンなどショー場面がたっぷりで、絵画作品も多く紹介されるが、浮世絵の影響が描かれてないのは日本人としてちと残念だった。

 

画家の伝記映画は、描かれた風景や人物が映像化される面白さがある。

中学時代にゴッホが好きになって伝記本を読み、テレビで映画「炎の人ゴッホ」(1956)を観た。
カーク・ダグラス主演、糸杉や跳ね橋、麦畑、アンソニー・クインが演じたゴーギャンもそっくりで、いちいち「あ、これ!」と声を挙げながら。