町内の若い物が集まってそれぞれ苦手なものを話し合う。蟻がこわい、蜘蛛がこわい、ムカデ・・・、何でそんなものが、ということで盛り上がる。
一人が「まんじゅう」と言うので、仲間が悪ふざけでまんじゅうを買ってきて、その男に与えると、「わー、怖い、怖い」といいながら全部食べてしまう。
実は大好物で仲間をだますという滑稽噺。
これには訳がある。
子供時分は何でも乗り物に酔った。
当時カニは庶民の安い食材だったが、この臭いが充満した車内に乗って、何度か酔って親や車掌さんの世話になった。
この体験がトラウマになっていることに気付いたのは40歳頃だったが、今なおカニの姿を見るだけで気持ち悪くなってしまうのは致し方ない。
アレルギーではないので仕事の接待などで出されると食べることは出来るが、喜びなどなく、まして、自ら望んで食べることはない。
こうして「カニ」の文字を何度も入力した今、胃の辺りが少々穏やかでないほど本当に「こわい」のである。