家にいらしたごえんざん(方言でご住職のこと)に、落語「蒟蒻問答」に出て来る問答の意味を聞いた。
小学5~6年の私がテープ録音から聞き取ったメモはこんなカナ交じり文だったと記憶している。
「とうかいに魚あり 尾もなくかしらもなく なかのしこつぼたつ」
「しょうふうのいんは 松に声あるや松はまた風に声あるや」
部分的に聞き間違いもあるが、後で解説。
お年を召したごえんさんはメモをしばらく見て「最初のは漢字が分からんからなぁ・・・、次の『しょうふう』は松の風や、松が風にそよいで音を出すのは、松が音を出すのか風が出しているのかちゅうことや」
これだけでも分かって噺のリアル感が増して嬉しかった。
その後、大人になって更に調べた。
旅の雲水がこの寺を訪ねた理由は噺の中でも語られるが、門の石塔に刻まれた「不許葷酒入山門」(くんしゅさんもんにいるをゆるさず)で禅宗と分かるからで、その総本山が永平寺。
永平寺では今も修行のひとつとして問答をやっていてテレビで見たことがある。
先ほどのメモには聞き間違いがあって、「とうかい」は「ほうかい」、「しこつぼ」は「しこつを」だった。
「法界に魚(うお)あり、尾も無く頭も無く、中の支骨を断つ」
漢字の「魚」は上の頭と下の尾を取ると「田」、その中の支骨(骨組み)を取るから答えは「日」、或いは「口」。
「松風のイン」は「音」か記憶違いか?、ネット動画で1973年の春風亭柳橋は「松風のニギ」と言っていて、他の演者は「松風の二道(にどう)」と言っている。
松が風にそよぐ音は松か発するのか風が発するのか、答えは「どちらでもない」で、白黒決められないことがあるということらしい。