芸事2―蒟蒻問答

小学生の頃、家にオープンリールのテープレコーダーがあって、テレビから音楽や落語を録音して聴いていた。

古典落語の世界はテレビ時代劇などの風景とすり合わせて想像していたが、住んでいたのは福井県の田んぼに囲まれた町だったので、田舎が舞台の噺にはリアル感があった。

中でも好きだったのが「蒟蒻問答」で、春風亭柳橋(6代目)がおじいさんの昔話を聞くようで好きだった。

 

上州安中の蒟蒻屋六兵衛のところに居候の八つあん、地元にある寺のインチキ住職になる。

弔いもなく昼間から酒を飲んでのんびり過ごしていると、越前の永平寺から旅の僧が訪れ禅問答を申し出る、断るが問答を受けるまで毎日来ると言う。

問答に負けると寺を明け渡す決まりに困った八つあん、六兵衛に相談すると「ならば俺が住職のふりして座る、何を言っても黙っているから、塔婆でぶんなぐって煮え湯かけて追い払え」と乱暴な計略。

翌日、僧が来て問答になるが・・・。

 

作者は江戸幕末の僧侶経験者で問答シーンの言葉が難しい。

地方が舞台でしかも「永平寺」でリアル感がつのり、問答の言葉も理解したいと思い、テープから聞き取ってメモした。

祖母にメモを見せたが分からない、じゃあお寺の噺ならお坊さんかと思った。

当時、家に毎月お坊さんがお経をあげに来ていた。

私が生まれる前に亡くなった祖父の月命日に祖母が頼んでいた。

お経が終わると祖母が「孫がお聞きしたいことがあるそうで」、お年寄りのご住職「何やろか?」、落語のことが失礼ではないかと緊張しつつ・・・。続く。