以前帰省した時のこと、義姉がイタリア旅行から帰ったばかりでベニスで買ったゴブレットを見せてくれた、その瞬間「あ、旅情だ」とつぶやいた私。
映画「旅情」(1955)"Summertime"
アメリカから中年の独身女性(キャサリン・ヘップバーン)が休暇でベニスを訪れ、骨董品店で名物のゴブレットを買う。
親しくなった店の主人(ロッサノ・ブラッツィ)は妻と別居中で、心迷いながらも恋する。
デートで手にしたくちなしの花が水路に落ち、拾おうと二人で手を伸ばすが流れて行ってしまう。
旅の終わりに別れを決断した二人、帰国する女性を乗せ列車は発車、ホームに駆け込んだ男性は追い付けず挙げた手にくちなしの花、車窓から涙ながらに手を振る。
若い頃テレビで観て番組終わりに水野晴夫さんの映画解説。
「くちなしの花が流れて行くけど手が届かない、恋の行方を暗示していたんですね」
あーそうか成程と感心した私、水野さんのキメフレーズ「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」に深く頷いた。
テーマ曲「ベニスの夏の日」"Summetime In Venice"を演奏するようになった。
ビデオ時代になり好きで幾度も見返す内に、サンマルコ広場でバンドがテーマ曲演奏シーン、覚えたメロディーの前に別の部分がある、「ヴァースだな」と採譜して覚え、以後、必ずヴァースから演奏している。
ロッサノ・ブラッツィは渋い二枚目俳優でテーマ曲の録音があるが、歌いかけては語りになってラストまで、歌が得意ではなかったのかもしれない。
ところで義姉はそんな出会いもなかったようで、変わらず夫婦円満はなによりである。