映画と音楽132-宴のタブー

映画「バード」(1988)、ジャズの革新的存在と言われたアルトサックス奏者、チャーリー・パーカーの伝記、クリント・イーストウッド監督。
パーカーたちが宴会仕事と聞いて行くとユダヤ人の婚礼で、ユダヤの曲を演奏するがアドリブを始めると長老が怪訝な顔、それがすぐ笑顔に変わって拍手喝采
優れた音楽は文化を越えて受け入れられる、監督のこだわりを感じるシーンだった。

 

若手の頃、宴会出演はイベント事務所からの依頼が多かった。
何か月か先の日程を「仮押さえ」、同じ日に別件が重なると「ペンディング」(保留)、条件確定し「決定」で保留を断る、その後中止の場合は事務所からキャンセル料が支払われるのが暗黙の業界ルール。
とはいえ時にルールなきキャンセルに泣きを見ることもあったが、婚礼に関しては滅多となかった。

 

披露宴出演でのタブーは失恋の曲。
若手の頃共演活動したジャズ歌手は学生時代ピアノ弾き語りをやっていたそうだ。
披露宴の進行が予定よりも早まり「すぐやって」と言われ、慌てて弾き語りしたのが「サントワマミー」、しかも日本語歌詞で〽二人の恋は終わったのね~、瞬間、全身冷や汗吹き出し歌い切り、幸いクレームはなかったそうだ。

 

歌のない器楽演奏で例えお客様が歌詞を御存知なくても、演奏家として幸せを届けたい気持ちから「いそしぎ」「酒とバラの日々」などは避ける。
あるライブご常連カップルの披露宴出演を依頼され、新郎はジャズ好きで明るい人柄だったが「ラウンドミッドナイト」「レフトアローン」を是非にと熱いリクエスト。
新郎の希望に沿いたいのは山々なれど、2曲とも失恋曲の中でも特に暗いメロディー、祝いの宴でとても演奏する気持ちになれないことをお伝えしご理解頂いた。
婚礼話は明日に続く。

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