小学校低学年の頃、母と乗る電車に「ボテさん」と呼ばれる行商のおばちゃんの荷はカニが満杯、その匂いと乗り物酔いダブルで辛い経験が幾度か。
これがトラウマになって今もテレビ通販のカニも目をそらす。
35年ほど前の12月、若手グループで兵庫県の日本海側へ、小さな港町の青年有志が立ち上げたジャズライブ。
雪の夜、ライブは盛り上がり打ち上げでの交流も楽しかった。
深夜0時頃お開きとなり「ホテルがない町で旅館ですが」と、数分歩いて案内されたのは明りの消えた鮮魚店で、二階が宿泊施設だった。
いやな予感はしたが、鮮魚店は旬のカニ満載、脇の階段上がった部屋もカニ臭充満、気持ち悪いがここで寝るしかない。
先に風呂場に行きお湯の水道をひねって浴槽に、暖房のスイッチ入れ、しばらく待って手をかざすと冷風のまま、え?故障?と、貼ってある紙に気付いた。
「夜10時以降の給湯と暖房は停止します」
え、まさか!急ぎ風呂を確認すると悲しき水風呂。
雪の日本海、暖房も風呂もなし、あるのはカニの匂い、仕方なく歯磨きして布団かぶって寝た。
カニが頭の脇を這う夢にうなされて起きたことを今も覚えている。
東京に戻って1週間後に同じバンドで北海道に飛んだ。
道内最高ランクと言われる「札幌グランドホテル」ラウンジに3日間出演。
頂いた客室は広く、ダブルベッドにソファー悠々、Tシャツ一枚で過ごせて快適そのもの。ホテルの食事を頂いた上に、「ライブ終了後はバーでお好きに飲んで下さい」。
どちらも良き時代の良き思い出。