芸事23-社長

芸事シリーズ23「先生」に続いて本日は「社長」

 

駆け出しの頃、ホステスさんが接客する店のレギュラーバンドの仕事も多かった。

そういう店では常連は別として、名前や職業が分からない客は皆「社長」と呼ぶことが多かった。

赤坂のクラブだった、べ―シストのバンマスは愛想が良い人でお客と見れば「社長」を連発、時折チップなど頂くとひと声高く「シャチョー!ありがとうございます」だった。

 

ある夜、バンマス初めての客に「社長!」と呼びかけたらお連れの方が「この方は会長だ!」、会長さん本人は「まぁまぁ」といさめたがバンマス慌てて「すみません、失礼しました!」と、「社長」は万能でもなかった。

 

15年ほど前、よくライブにお越しになったTさんは会社経営の社長さんで、会社の近くにあるという「手作りピロシキ」の店から箱詰めで拙宅に宅配してくれた。

家内も美味しいと喜んだが、Tさんからは果物なども届くと家内が「どなたから?」と聞くので「Tさんだよ」と言うが「誰だっけ?」なので「ほら、ピロシキの」と言うと「あぁ!」と、その内「ピロシキ社長から」で通るようになった。

 

ある時、自宅に電話があって「Tです」と。

ライブでしかお会いしない方であり同姓の知人が複数いることから瞬間、「え?」、「〇〇会社のTですよ」と言われて「あっ!」。

お届け物を頂くのにとっさに分からないなんて、と、慌てた私「あっ!ピ・・・」“ピロシキ社長”と言いかけてぐっと飲み込んで、「ピ、ピアニストの高浜です」となんとか取り繕った。

 

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