言葉4-ユー

さかさ言葉を言語学では「倒語」と言うのだそうで、江戸時代から隠語的に使われていたようだ。

上方古典落語「七度狐」で旅の二人連れ、片方が腹「ラハ」、胸「ネム」と体の部位を逆さに言うと、もう一人が「そんなら、目、耳は」と聞いて困らせるシーンがある。

 

ジャズ界の逆さ言葉はいつ言い出したのか知らないが、若手の頃は業界符丁として使われていた。

プロなりたての頃に私より一回りほど先輩に「ユーはケーサ、ミーノするの?」と言われて意味不明だった。

「君は酒飲むの」と聞いていたのだ。

私より上の世代で同年か年下の相手を「ユー」と呼ぶ人は多かったのは、進駐軍時代の名残だろう。

 

仲間内の会話では多くの単語が逆さで「ジャズメン言葉」などと呼んで「シーメ」(飯)、「ヒーコ」(コーヒー)などは分かり易いが、慣れると難易度の高い会話もあった。

「ラーギャスイヤなゴトシ」(ギャラ安い仕事、高いと「カイタ」)

「エーマのヤジオ、パラヨッテ・サイウル」(前のオヤジ(中年男性)酔っぱらってうるさい)など。 

会話中7~8割の単語に使われていて、ギャラの金額などお客に聞かせたくない話などにも重宝した。

続く。