言葉7-浦島現象

会社などでは新入社員からベテラン社員までいてそれぞれのキャリアを意識することはあると思うが、私は20歳から同世代や先輩との共演ばかりで年を重ね、若手とのつきあいというのがほとんどなかった。

50代後半、ジャズピアノ・レッスンに来ていた生徒さんが勤務する会社で、ライブ演奏を売りにしたレストランを始めるから出演してもらえないかと、それが「俺の」シリーズだった。 

2013年初頭、銀座に「俺のイタリアンJAZZ」がオープンして私のトリオで初出演。

スタッフさんの司会で「本日はジャズ界のベテランをお迎えしております」と聞いて、どなたか先輩が隠れゲストで来ているのかとトリオ同士「誰だろう?」と言い合ったら、自分たちのことと分かり「えっ、俺たちベテランなの?」。

 

この店のライブ出演者が全員20~30代で、突然ベテランと呼ばれることになった。

その内トリオ以外でピアニストとして若手の方々との共演を頂くようになると、彼らが「バンド言葉」を話さないことを知って「浦島太郎」のような気になった。

 

同世代や先輩とは「バンド言葉」で会話していたが若手の方々には使わないように意識した、それでも全く使わないことはないだろうと思っていた。

ところが休憩時間に「シーメ行かない?」と食事を誘うと「シーメ?、あ、ご飯のことですね、はい行きましょう」で、これすら使わないのかと知る。

うっかり「イレト行ってくるね」と言えば「?・・・あ、トイレですか。昔のミュージシャンは何でもさかさにしたそうですね」と言われて「む、昔かい!」と心のつっこみ、いちいちが「浦島」現象だった。

続く。