映画と音楽50-ブルース

映画「フットライトパレード」(1933)の主題歌「上海リル」は当時、ディック・ミネさん他何名かの女性歌手が録音し、日本語歌詞も複数のバージョンがある。
終戦後、この曲の冒頭のメロディーを引用した「夜霧のブルース」、そして「上海帰りのリル」の大ヒットで映画と歌の続編が次々制作、この影響の大きさを作曲者ハリー・ウォーレン氏はご存知だったのだろうか。
私が初めて「上海リル」を聴いた時「アメリカの曲なのに昔の歌謡曲みたいだ」と感じた訳が分かった。

 

昭和は「~ブルース」が大いに好まれたが、服部良一さんの「別れのブルース」(1937)が最初とのこと。
時代的に「上海リル」の影響もあったかと思うが、服部さんの自伝によると「セントルイス・ブルースのマイナー(短調)部分から発想した」とある。

セントルイス・ブルース」を作曲したウイリアム・クリストファー・ハンディーの伝記映画が「セントルイス・ブルース」"St.Louis Blues"(1958)、主役をナット・キング・コールが演じた。


20世紀に入ろうとする頃、ハンディの父は牧師で黒人でありながら黒人音楽を否定。
ハンディは教会のオルガン奏者になるが疑問を抱き父と決別、偏見の強い社会にあって黒人音楽への情熱を注ぐ。
眼病で失明寸前の苦難を乗り超えて作曲した「セントルイス・ブルース」が世に認められ父とも和解。
キング・コールの歌とピアノは勿論、ハンディーを支える役がアーサ・キット(あの「証城寺の狸林」を歌った)、エラ・フィッツジェラルド、マヘリヤ・ジャクソン他大物ゲスト歌手続々の音楽映画だった。