映画と音楽100-宇宙と木箱

先日テレビで映画「スペースカウボーイ」を観た、2000年に制作されたクリント・イーストウッド監督主演のSF。
米ソ冷戦時代に秘密裏に開発された核弾頭ミサイル搭載の衛星、老朽化して地球に落下の危険。
かつて開発に携わり既に退役した技術者たちが宇宙へ飛ぶが、回避手段は手動のみとなり、中の一人(トミー・リー・ジョーンズ)が「病で余命わずかだから」と単身衛星に乗って月へ向かう。
月面に衛星の破片と横たわる宇宙服姿に「フライミー・トゥ・ザ・ムーン」が流れるラストシーン。

フランク・シナトラがカウント・ベーシー楽団をバックに歌った1964年の録音で、アレンジャーがクインシー・ジョーンズ
月の曲として誰しも思い付く選曲だが、このバージョンでなければならなかった理由がある。

 

この曲は60年代半ばに多くの歌手が歌ってヒットし、私の家にはブレンダ・リーがゆっくりとワルツで歌うシングルレコードがあって「月へ飛ぶ想い」の邦題だった。
中学1年の夏休みに入った頃、テレビで人類初の月面に向かうアポロ11号の発射中継にくぎ付けになった。
翌日から宇宙船内の映像と音声が同時通訳により届けられ興奮の毎日、飛行士が「フライミートゥザームーン」を聴いていると報じられた瞬間が忘れられない。
当時我が家のシングルレコードは木製の細長い空き箱に、無地の紙を貼った中に収められていた。
非現実の宇宙と畳に置いたレコード木箱がひとつの歌で繋がる不思議感覚、今もありありと覚えている。
その飛行士たちが船内で流したのがあのシナトラバージョンだった。

 

 f:id:nemannekenarui1955:20201219051959j:plain

明日は近況更新にてシリーズお休みします。