映画と音楽122-譜面と普通

例えば料理人は初めて食べる味でも舌でレシピを想像でき、画家は目にした対象を即座に描けるように、ジャズ演奏家は知らない曲でもワンコーラス聴いてコード進行を把握しアドリブ演奏するのは「普通」のこと。

と言っても何でもという訳でもなく、例えば私と北村英治さん共演の「ボナセラ」や「チャタヌガーチューチュー」など通常取り上げることも稀な曲で、聴いて把握するのも難しくゲスト共演者に譜面を用意する。

 

世界的テナーサックス奏者スコット・ハミルトンさんとの初共演は北村さんのあるコンサート、リハーサルはあまりにも簡単に終了して楽屋へ。

「ボナセラ」他バンドの曲をリハーサルしておらず、北村さんに「譜面は?」と聞くと「あぁ、彼は大丈夫だよ」と一切用意せず。

お二人が旧知の仲とは言え本当に大丈夫なのかと思った。

 

それが本番開始するとまるで普段共演しているかのような見事な演奏、これほどの共演者は初めてで私の「普通」を大きく超えていた。
膨大な曲の情報を記憶し、聴いた音を瞬時に記憶分析して対応する能力がずば抜けている、しかもそのフレーズは素晴らしく魅了する。

 

スコットさん譜面初見が苦手とのことだが、それをカバーして余りある力。
昨日、ウエスモンゴメリーが譜面読めなかった話が半信半疑だったと書いたが、こういう能力をして成し得たことと理解、貴重な体験だった。
スコットさん米国出身で長年ヨーロッパに住み活躍、しばらくお会いしていないがコロナ禍をどう過ごされているだろう。

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写真は2018年冬