7時過ぎに店に入ると、ピアノ席のすぐ後方テーブルに男女4名。いずれも30代から40にかかる方々か。
かなり大声で盛り上がっていて、マスターに「もうすぐライブ始るから・・・」とくぎを刺される。
さて如何かとピアノに座ると、急に後方シーン。
まだ時間も早くカウンターに少しのお客様で静かなのにも関わらずの盛り上がり。
熱心に聴き入り拍手喝采で楽しんでくれて、気分良い夜だった。
以前、ナットキング・コールのビデオで見た、コールが歌ったきっかけというシーン。
米国のテレビ番組用か何かのカラー映像で、コール晩年の1960年頃だが、若き日を本人が演じていた。
酔客で喧噪の酒場でソロピアノを弾くコールに酔った親父が、「お前ー、何か歌え」とからむ。
「すみません、私は歌えません」と断ると、「いいから歌え!」と。
そこに店主が来てコールに「ご常連だから何か歌え!」とキツイささやき。
やるせない表情でコール"Sweet Lorraine"を歌い出す。
すると周囲が一斉に沈黙、終わったとたん大歓声、と、いかにも昔の映画らしいのがあった。
と、この話を持ってくると、いかにも私が同じような気になっていると誤解されそうだが、全くそんな気はない。「当然だ」とおしかりを受けそうだが。
でも、「その気になる」のは芸事には必要で、演者がその気になってやると人もその気になって楽しんでくれるってのはある。
但し、その気でもあの気でも、出た音が質の高いものであるべく、日頃の精進が大切、と、自分に言い聞かせるのであります。
さて、本日は銀座ジャズ&バー「エムズ」、山口雄三さんとデュオ出演。