飾らない

バッハの時代はピアノが発明されてなかったので、チェンバロ用の作品も多く、後にピアノでも演奏するようになった。

クラシックピアノ初心者向けの練習曲集「バッハ・インベンション」では、右手左手がそれぞれ独立した旋律を弾く(対位法)練習と、装飾音(トリル)も学ぶ。

チェンバロが強弱がつかず音の伸びも短い楽器なので、装飾音は重要でピアノ演奏でも生かされる。

 

クラシックでは装飾音がきっちり譜面で決まっているが、ジャズは自分の好き勝手でよい、これも私が好きになった理由のひとつ。 

メロディーの音を変えるも装飾をつけるも自由でしばりがない、これは面白い、と、初心者的にはそう思った。

 

若手の頃に多く共演させて頂いたトランペットの光井章夫さんは、アドリブも見事だがメロディーを演奏する見事さに感心した。

音をあまり変えもせず装飾もせず、なのに素晴らしい。

自分もと思ったがこれが難しくて、どうしても装飾音つける音を変える、

45歳になって北村英治さんとの共演が始まると「装飾音が多過ぎる」と言われて、この指摘がとてもありがたかった。

「星に願いを」「虹の彼方に」、今は弾き語りが多いこれらの曲も、ピアノ演奏では極力変えず装飾せず、それが心地よく感じられるのに随分時間がかかった。

自由でしばりがない中で良い音楽とはを見つけるのはジャズの難しさでもある。