ジャンプとカセット

40年余り前、「ジャンプ」という音楽スタイルを教えてもらったベースの牧裕(まき ゆたか)くん、関西訛りがソフトで穏やかな人柄だった。

ジャンプ(あるいはジャンプ・ブルース)とは、1930年代後半から40年代、黒人のブルース、ブギウギ、ジャズが融合した音楽で、後のロックンロールにもつながる。

 

牧くん、大学卒業したら郷里の兵庫県で家業を継ぐけど、東京の音楽活動が終わるのはとても辛いと。

その活動というのが“ジャンプ&ブルースのフルバンド「吾妻光良とスインギンバッパーズ」。リーダーの吾妻さんはブルースギターと歌、牧くんと大学同窓で、やはり卒業したら就職してバンドも解散する予定。

 

卒業が間近に迫ったある日、牧くんが別れのしるしにとカセットテープをくれた。

「ジャンプナンバーを集めて録音したから、気に入ってもらえたら」と。

ルイ・ジョーダン&ティンパニーファイブ、ジョー・リギンス&ハニードリッパーズ、などなど、初めて聴くものばかりだったが、どれも気に入った。

ジョー・リギンスのバンドテーマ曲”Honey Dripper”は、オスカー・ピーターソンのアルバム「ナイトトレイン」で知ってて、「あ、これが元だったのか」。

 

それからしばらく経って、兵庫県で家業を継いだはずの牧くんと東京でばったり会った。「実は、どうしても東京に戻りたくて親父に相談して許してもらった」。

ギターと歌の吾妻氏はテレビ局に入社したが、バンド解散ならず勤務の傍ら続けていると。

このバンドに一度だけ私も呼んで頂いて高円寺「ジロキチ」で共演したことがある。

その後もジャンプ&ブルースをベースに日本語オリジナルで現在も活動中のようだ。

 

牧くんのカセットは長年愛聴したが今は手元になく、ふと思い出してユーチューブ検索したら、あった。ご興味ある方は下記のワードでどうぞ。

JOE LIGGINS “SO ALONE”