まだジャズ

ベルト・ケンプフェルト楽団の「真夜中のブルース」は1957年のドイツ映画「朝な夕なに」のテーマ曲だった。

 

ある学校に若い女性教師が赴任して16歳の男子クラスを受け持つ。

当時の西ドイツにこんな校舎があったのかと思うほどモダンで洒落ている。

先生は下宿先(これまたお洒落)に落ち着くが、棟続きでクラスの学生マルティンが一人住まい、先生に恋心を抱く。

マルティンはトランペットを演奏し、同級生とのジャズバンドで週末にライブ出演。

ところがドラマーが病に倒れ「演奏で送って欲しい」と言い残して亡くなる。

学校側は「葬儀にジャズなど世間から批判される」と反対、女性教師は「全責任は私が負うから希望を叶えて」と訴え、教会も故人の遺志を尊重し埋葬で「真夜中のブルース」が演奏される。

その後はあっけない展開でハッピーエンドとなる。

 

学生バンドは6人編成で、トランペット、クラリネット(&テナーサックス)、ヴァイブラホン、ギター、ウッドベース、そしてドラムだった。

音楽的にリアルで、「真夜中のブルース」はライブや埋葬などシーンによってトランペットのフレーズが違い、野外の埋葬シーンもドラムが抜けた5人の音。

この時代の映画にありがちな、いるはずのないオーケストラが後からかぶさることもないのが良い。

 

曲としては、冒頭のトランペットソロ部分のみブルースとジャズ的要素があるが、本編はクラシカルでジャズっぽさはない、でも映画ではジャズだと、そういう時代だったんだと思う。

1957年といえば、ロックンロールも若者に人気が出ていたが、まだジャズが大衆音楽の軸としてあった時代だと思う。

同じ年(昭和32年)の日本映画「嵐を呼ぶ男」も主人公はジャズドラマーだった。