「失われた週末」(1945)、レイ・ミランドが演じる主人公は深刻なアルコール依存症。
兄と恋人が立ち直らせようと、ある週末に酒も現金も持たせず一緒に過ごそうとするが、本人一人で街に出てふらりとバーへ。
ピアニストがソロ弾き語りしている、ソファーへ座り酒を注文、そっと隣の女性のバッグに手を伸ばし財布を、取り押さえられてお客が一斉に歌いかける、♪”Somebody stole a purse”♪(誰かさんが財布を盗んだ)、外に放り出される。
これ、スタンダード曲”Somebody Stole My Gal”(誰かに恋人を盗られた)の替え歌。
ディキシーランドで取り上げることが多い曲で、関西圏ではおよそ知らない人がいない、と言うのも、ピーウィーハント(Tb)の録音が長年「吉本新喜劇」のテーマとして使われているからだ。
それほど明るい曲調と無銭飲食の悲哀との強烈な明暗が記憶に残る。
この後更に症状が進み壁から虫がはい出る幻覚症状シーンもあったが、結末は覚えていない。
レイ・ミランドの主演作品は他に、「呪いの家」(1944)、兄妹が移り住んだ家で起こる怪奇現象のホラーで、テーマ曲がヴィクター・ヤング作曲「星影のステラ」”Stella By Starlight”だった、それと「X線の眼を持つ男」(1963)は透視眼薬の開発で自ら実験台となって破滅する悲惨なSF、たまたま暗い役ばかりしか知らない。