映画と音楽27-アル・ジョルスン

1970年代に出版された和田誠さんの本に『サミー・デイビス・Jr来日公演でお得意のモノマネを披露する。ナット・キング・コールディーン・マーチンに比べてアル・ジョルスンは反応がない、アメリカでは大受けするのだが』。

これを裏付けるような映画が「ロング・グッドバイ」”The Long Goodbye”(1973)のセリフ。
私立探偵フィリップ・マーロウが無実の罪で警察に連行され、指紋採取に反抗してスタンプの黒インクを顔に塗り「アル・ジョルスンでも歌おうか」。

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アル・ジョルスンは顔を黒塗りして黒人風要素を歌に盛り込み、20世紀初頭に大スターになった。
これ以前の19世紀、黒人の舞台出演が許されない社会において芸能一座「ミンストレル・ショー」で白人が黒塗りで歌やコメディーを演じた。
このショーはミュージカル映画「ショーボート」に描かれていて、映画もレコードもなかった時代に、各地巡業によってフォスター曲などが人気になるメディア役も果たした。

アメリカ大衆芸能のルーツと評価されたが、90年代以降、黒塗りで滑稽さを演じるのは黒人差別による白人至上主義と批判されるようになる。
アル・ジョルスンに差別意識があったのか黒人音楽への敬意かは分からないが、そんなことで近年知られなくなったようだ。

 

私が”April Showers”、”Rock-a-bye Your Baby With A Dixie Melody"を弾き語る時「アル・ジョルスンが歌った」と紹介、理解する人が少ないことを承知の上で。
因みに東京吉祥寺の老舗スイーツ店「レモンドロップ」のロゴはジョルスン映画「ジャズシンガー」が使われている。

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明日は銀座「スイング」年内ラストの出演。