コール・ポーター

昨日、銀座「シグナス」、水森亜土さんとトリオの月例ライブ。
トリオへのリクエストは、映画音楽「ひまわり」とコール・ポーターの「よくあることさ("Just one of those things")」。
2曲とも時折演奏するナンバーで打ち合わせもなく、お送り出来た。

コール・ポーターという作曲家はワンコーラスが長尺の作品が多い。
多くのジャズナンバーは32小節程度でワンコーラスで、後はそのコード進行をアドリブで綴って展開してゆくが、ポーター作品はそれより長い曲が多い。

最たるものが、「ビギンザビギン」で、何と118小節でワンコーラス。これをアドリブで展開して行く録音はあまり聞いたことがない。
歌の場合は、短い間奏の後に後半を歌って終わる。

先日の「夏生れ」コンサートでもワンコーラスで完結。チェロの豊かな音でメロディーを演奏、お客様には名曲の素晴らしさを感じてもらえたかと思う。

コール・ポーター氏は富豪の家に生まれ、親は法律家にさせようと大学に通わせたが、音楽への情熱が捨てきれず作曲家となった。
最初はレビューなどで成功するが、低迷期に入りフランスに渡る。
1935年にパリのリッツホテルで作曲したのが、「ビギンザビギン」と言われる。
その後は次々とヒット作品を生み、ニューヨークの高級ホテルで妻と暮らした。

低迷して尚、パリの高級ホテル暮らしで名曲を生むとは何とも贅沢な話しだが、作品にはどこか欧風の優雅さとリッチな味わいがある。

作曲家ヴィクター・ヤングも少年期をハンガリーやロシアで過ごしたので、東欧の哀愁を感じる作品もある。こちらが庶民的な美しさを感じるのに対して、ポーター作品は豪華でリッチな味わいが魅力。
その違いを例えて言えば、ヘップバーンが庶民から女王までを演じるに似た多様な魅力がある。

ハングリーな中から後世に残る芸術作品が生まれる話は多いが、そんなこととは無縁のコール・ポーター作品。時代を超えて人を魅了する。