ソロでも曲によっては右手は休まず、左手で瞬間メモを手に取ることがあるが、少々両手が忙しく、曲を終えるまで取れなかった。
何の曲か気になりつつ、その時カウンターから会話が聞こえた。
マスター「〇〇さん、訳の分からないリクエストはしないでよ」
ご常連「そんなのしないよ、ちゃんと路線に沿った曲だよ」
演奏しつつ何だろう?、と、曲を終えてメモを見ると、「ディサフィナード」("Disafinado")。
確かに、「イパネマ」と同じブラジル曲で作曲も同じアントニオ・カルロス・ジョビン。
マスターの疑いをかけられたお客様の無実を晴らそうと(?)、私「あ、これは路線に沿った曲をリクエスト頂きました」と。
大体は覚えていて、瞬間、弾こうかとも思った、が、パス。
というのも、この曲メロディーの諸所が半音使いの凝った曲で、そこが名曲たる所以でもあるが、記憶の正確さに自信なかった。
幸いその下に「WAVE」も書いてくれていたので、弾き語りで、アドリブの後のサビで少々のフェイク(メロディーを少し変える)を入れてお送りした。
ボサノヴァもジャズも、アドリブやフェイクは魅力的な要素だが、原譜をちゃんと記憶して演奏する方が望ましい曲もある。
100%原譜通りでなくても良いが、ここは外せない音というのがあって、それは過去の録音録画に残る名人達にも共通している。