映画と音楽33-ブギウギ

グレン・ミラー楽団が主演した映画「銀嶺セレナーデ」(1941)で発表された「チャタヌーガチューチュー」、歌詞の一部♪汽笛が"Eight to the bar"を刻む頃はチャタヌガーも近いぞ♪。
"Eight to the bar"は直訳すると1小節に8つでブギウギのこと。
4拍子の1小節は1,2,3,4、ジャズだと「フォービート」、ブギウギは1泊を2回づつガガギグ・ガガゲゴと8つ刻む。
これを「エイトビート」と訳すと60年代以降のロック・リズムを指すので違ってくる。
4ビートより細かく忙しいから、うきうきするような躍動感を感じる。

ブギウギは1920年代のシカゴで、貧しい黒人が自己流でピアノを弾いたのが始まりとされていて、40年代に白人バンドが取り入れて大人気となり世界的に広まった。
この時代カントリー音楽においても、ハンク・ウイリアムスが黒人音楽の要素を取り入れた"Move It On Over"などあれこれあって、50年代に入ってロックンロールへとつながる。

ロックンロール誕生と言われるのが1955年の映画「暴力教室」"Rock Around The Clock"と、テーマ曲のビル・ヘイリー&ザ・コメッツの「ロック・アラウンザ・クロック」。
曲の明るさに対して映画は不良生徒の暴力と教師の対立のシリアスな内容だった。
先生が好きなエディー・コンドン(モダン・ディキシー)のレコードを不良生徒が割るシーンなど、ロックが不良の音楽という印象すらもつ。
これで新たな音楽の誕生と評すのは如何なものかと思うが、私が生まれた頃の事情は分からない。
明日に続く。

映画と音楽32-ムーンリバー

昨日書いたナイアガラ観光の後ニューヨークへと移動、ツアーバス五番街ティファニー本店前を通った。
今様のキラキラしたブランドショップとは対照的に歴史を感じる地味な建物だったが、映画「ティファニーで朝食を」(1961)のファーストシーンとほぼ変わりないたたずまいに感激。

テーマ曲「ムーンリバー」はヘンリー・マンシーニ作曲、駆け出し時分から演奏して50代半ば頃に弾き語りで歌い始めたが、歌詞が難解だった。


ムーンリバーは1マイル余り、いつか超えよう
夢を生んでくれて、失望だってもたらす
曲がりくねった先に夢があるかも
ムーンリバーと私、ずっと一緒に♪

 

ムーンリバーって何?と調べると、作詞者ジョニー・マーサーはジョージア州の田舎に育ち、家のそばにバックリバーという大きな川が流れていた。

ニューヨークに出て世界的作詞家となる人生を大河に重ねたのだろう、それは映画でオードリー・ヘップバーンが演じた夢を追いかけて都会に住む女性にも重なるように思う。

「夢も失望も、見えぬ先の希望を信じて己の人生とうまくつきあって行こう」

これが教訓じみて聞こえず優しく寄り添うように感じるのは、さりげなく美しいメロディーの素晴らしさか。
映画会社社長がヘップバーンの歌が素人っぽいからカットとの意見を、ヘップバーンと作曲者マンシーニが猛反対し撤回させたという、結果として後世に残る名作となった。

 

ジョニー・マーサーの言葉「川の名前は何でも良かったが、あれこれ考えた結果誰も使っていないムーンリバーになった」、以来、故郷のバックリバーは「ムーンリバー」と表示されているそうだ。米国のサイトに写真あり→こちら

 

 

映画と音楽31-ナイアガラ

「カリヨン」は多数の鐘で様々なメロディーを演奏出来る装置で、鐘楼に設置されることが多い。

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昨日からのモンローつながりで映画「ナイアガラ」"Niagra"(1953)、挿入曲「キス」"Kiss"とカリヨン鐘楼(Callion Bell Tower)がキーポイント。

観光地ナイアガラのコテージに滞在する夫婦は不仲で、若妻(モンロー)が甘いバラード「キス」を聴いていると、中年夫(ジョセフ・コットン)がレコードを割る。

若妻は愛人がいて夫殺人を依頼、橋のほとりに建つカリヨン鐘楼でのリクエストサービスを利用し、殺害達成の合図「キス」が周囲に響き渡ると、不敵な笑みを浮かべるモンロー。
ところが夫は生きていて若妻は鐘楼へと追い詰められ絞殺される。

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2019年に夫婦旅行でこの地を訪れることになり、鐘楼が今もあることを知ると映画DVDとネットで現在の風景を見比べ周辺の道筋を記憶した。
いざ現地で感激興奮し「あれだ!」と力強く鐘楼を指した私に家内の「はいはい」と冷めた反応は想定内。
興奮収まり切れず、ツアー添乗員のお若い女性に「あそこでモンローが殺されました」と言うと「へぇー、そうですか」の薄い言葉、それも当然のこととそれ以上の言葉を無理やり呑み込んだ、ウググゥ~・・・。

 

カリヨン・リクエストが当時実際あったかは不明だが、現在はなく鐘の音も聴かなかった。
もし現地で「キス」が流れたとして、突然私は殺されるという妄想に取りつかれるほど重症でないのは幸いだが、多分に時代ズレの悲哀をこうしてブログに書いている。

映画と音楽30-お熱いのがお好き

年が改まっても変わらずお古いお噂でおつきあい願います。

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映画「お熱いのがお好き」""Some Like It Hot、1959年の制作だが舞台は禁酒法時代のシカゴ。
ジャズテナー奏者(トニー・カーチス)とベース奏者(ジャック・レモン)はギャングの殺戮現場を目撃し追われる身となり、女性だけのフルバンドに女装して潜り込み演奏旅行でフロリダ海岸のリゾートホテルへと逃れる。
歌手(マリリン・モンロー)とバンドメンバーはお金持ち男性をゲットしようとビーチへ、トニー・カーチスは男に戻り富豪御曹司になりすましモンローに近づく。
一方、ジャック・レモンは女装姿をリッチな老紳士に一目ぼれされ止む無くディナーへ、ダンスで激しいタンゴ「ラ・クンパルシータ」を踊るはめに。
一方、その老紳士が所有するクルーザーを我がものと偽ったトニー・カーチス、モンローを船に招いてレコードをかける。
甘い甘いバラード、「星へのきざはし」"Stair To The Stars"(ニール・セダカの同名邦題とは違う曲)

♪星に橋をかけて君と登っていこう♪

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映画で流れる歌はルディー・バレーの録音、1920年代から活躍した人気クルーナー。

陸と海のショットが切り替わる度に、激しいタンゴVS甘いバラード、女装男&老紳士VSハンサム&美女、このコントラストが滑稽で見事で、モノクロ映画ながら色彩すら感じるシーンだった。


この他、モンローが歌う"Runninng Wild","I Wanna Be Loved By You","I'm Through With Love"や、バンドリーダーの名がシュガーであることからテーマ曲が"Sugar"などなど、スタンダードジャズ満載の音楽コメディー映画だった。

 

正月はお琴

正月と言えばお琴、昔は「六段」も耳にしたが最近もっぱら「春の海」が定番。
筝曲家の宮城道夫が1929年(昭和4年)に翌年の「歌会始」の為に作曲したそうで、新春に相応しいわけだ。
西洋クラシック音楽の要素を取り入れ、ピアノなど洋楽器の演奏にも向いていることもあって、他の伝統筝曲より知られているのだろう。

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私が初めて演奏したのは45歳頃の正月仕事で二胡奏者のチェン・ミンさんと、日中共演はとても良い感じだった。
その後、クラシック・フルート奏者の坂元理恵さんと共演、元曲の尺八に近いので音を出した瞬間にハマった感あり、ピアノもお琴気分だった。

 

お琴と呼んでいるが、専門的には「琴」は日本古来の楽器で、「春の海」など一般的に耳にするのは中国伝来の「筝」(そう)と、弦の数や構造など違うらしい。
漢字の「琴」は楽器全般の意味もあって、「木琴」「鉄琴」、「手風琴」(アコーディオン)、「堤琴」(ヴァイオリン)など。
何故ヴァイオリンが「堤」かと調べたら、手に持つ、長い柄のさじなどの意味に由来するようで、これは中国語も同じだが日中双方で違う楽器漢字も多い。

ピアノは中国語で「鋼琴」、はがねのお琴とは成程と名刺にシャレで「爵士鋼琴演奏家  Jazz Pianist」と印刷した時期があった。

 

若い頃に出演していたライブのママ、お酒好きで低めのハスキーヴォイスだった。
「店に来るバスでちらっと見える『おとこの教室』って看板がどんなとこかずっと気になってて、今日、よくみたら『おこと』だったのよ。恥ずかしくなったわ」

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明日からシリーズ「映画と音楽」更新予定

 

令和3年なのであります

新年のお喜びを申し上げ難いコロナ渦中ではありますが、明るい希望を込めて本年も宜しくお願い申し上げます。


いや実は、昨日の元旦イラストに「平成三年」と印字してアップしてしまい、お二人の方からメールでお知らせ頂いて、慌てて修正したのが朝9時少し前。
それまでに目撃した方のみぞ知る、ボケましておめでとうは恥ずかしい。

こんなスタートでは今年も思いやられるが、気を取り直して、元旦イラストに鏡餅を書き足してみた。
明日はこれに門松と獅子舞でも書き足して・・・と思ってみたが、何だかどんどん安っぽくなりそうでやめにして、何かお正月に因んだ話題でも更新します。

 

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