北村英治さんとの会話に、落語のフレーズがちょくちょく引用される。
ご自身が健康御長寿なことを「因果と丈夫で」とか、差し入れのお菓子を半分に割って食べた私、後を引いて「もう半分」、その後に「この辺でお茶がこわい」と。
その一言に和み、何気ない会話も色を増す。
こういうのを覚えたのが子供から少年期にかけてで、北村さんと私の世代差から記憶に残る噺家も違うが、共有できるのは古典、スタンダードの良さだ。
とは言え、北村さんは昭和名人の方々と実際の交流があった筋金入りの落語ファン、私如きがとてもおこがましいことだが、そんな方とワンフレーズで和めることはありがたい。
落語は舞台セットもなく、座ったまま手ぬぐいと扇子だけで演じる一人芸で、聴く側の想像力と知識で楽しみが膨らむ。
知識という点で、古典に描かれる時代を知らなくても楽しめるのはストーリーの見事さと演者の芸の力。
そこは、スタンダードジャズにも共通する。