昔の自粛

30年余り前に活動したジャズコーラスの「ロミ&ジョーカーズ」は、ある有名作曲家S先生と縁があって事務所を間借りしていた。

S先生は私が中学生の頃にヒット歌謡連発しレコ大受賞、テレビのプロ登竜門番組の審査員でよく出演されていた。

ちょくちょく音楽ショーコンサートがあって、我々バンドもお手伝いさせて頂いていた。

 

ある年のクリスマスディナーショーのリハーサルで、午前中に新宿のスタジオ集合。

私、ドラマーと彼の紹介で来たギターの3人だけ、「あとの二人はどうしたの?」

ヴォーカルとベースは当時夫婦で、ほどなくスタジオに電話連絡(携帯の無い時代)あり、「すいません、今、起きました、すぐ向かいます」。

間が悪いことに前日グループで仕事だったので、夫婦の車にドラムも積み込んである、

 

S先生「じゃ、とりあえず3人で始めようか」と譜面を配った。

私はS先生ヒット曲はイントロから覚えているほどの世代だったが、ドラマーとギターは若くて知らないのも当然で、しかも、ギター氏は初見が弱かった。

普段優しいS先生、2~3回ミス続いて「そこギター違うよ、譜面に書いてあるでしょ」、

徐々に言葉がきつくなりギター氏パニくってしどろもろ、弾いてる音も弱くなり、S先生厳しい表情で「何やってんの、ギターもういい、そのフレーズ高浜ちゃん弾いて」

私も初見弱いけど覚えてるだけなんだよと慰めの言葉とてかけられず、ああ、これはまずい、と、そこに遅刻二人飛び込んで来た。

「すいません、すいません!起きられなくて渋滞で、すいません!」

S先生、どれほど怒るかと思いきや、急に表情緩んで「どうしたの~、いやぁ、無事ついて良かった良かった。さ、やろうか」。

 

結局このディナーショー、昭和天皇容体悪化による「自粛」でキャンセル、1988年12月のことだった。