コロナで「無観客」「オンライン」という言葉も日常的になり、私も先日北村英治さんの動画収録に参加した。
落語も無観客動画配信が多くなったが、子供の頃にもテレビで無観客のスタジオ収録をよく見たことを思い出す。
地方で育ったので寄席は行ったことがなく、上京後に初めて行ったのが新宿「末廣亭」。
テレビでしか知らなかった世界のライブ感がたまらなく楽しく、電車も乗り換えなく1本で帰宅できる便利さもあって、たまに行くようになった。
ある時、小学校に上がったばかりの長男を連れて行った。
寄席は日に昼夜2回公演、夜席の夕方5時にめがけて行くと客席はまばらで、落語も前座さんから出演。
前座は修行中の身で羽織も着ず演目もシンプルな「前座噺」というきまりで、この時は与太郎がクイズを出す内容だった。
「あのね、鼻が長くてデカい動物ってなんだ?」
「そんなの誰だって分かるよ、ゾウだろ」
「へーっ、よく分かるね。じゃ、じゃあ、あの、首が長―くて」
と、そこで長男が「キリンさんだ」と、小声で言ったつもりが空いていて噺の間(ま)と相まって周囲に聞こえてしまった、当然高座にも。
私はあわてて子供の口を手でふさいだが時遅し、噺を台無しにして申し訳けなく、前座さんが絶句でもされたらと焦った。
すると前座さん少しも慌てず、「お前ね、小さな子供でも分かるクイズ出すんじゃないよ」。
少ない客の笑い声に親としてほっとして、アドリブの切り替えしに感心した。
寄席経験あれこれ、ライブトークに大いに役立った。