一般的にジャズピアニストは、「チュニジアの夜」「ラウンドミッドナイト」「スペイン」などの曲をレパートリーにもつ人が多い。
それらの曲と演奏する人に対して客観的敬意から、駆け出しの頃はトライしたこともあった。が、それを自分が弾きたいという主観の部分で情熱が湧かなかった。
何年か前に、世界的なテナーサックス名人、スコット・ハミルトンさんとご一緒した時に、カタコト英語でジャズのスタイルや好みの話をした。
すると彼が「アメリカで大学のコンサートに呼ばれた時、学生が『ジャイアントステップス』を演奏してくれませんかって。えっ、この私が?って言っちゃったよ(笑)」と。
「ジャイアントステップス」はメロディーもコードもかなり複雑な曲で、スイングスタイルのスコット氏とはかけ離れた曲想。絵画に例えるなら、モネとピカソほどの違いがある。
音楽芸能は、己を知って芸を延ばすことが大切。
己を知るには、様々な可能性へのトライと試行錯誤から主観と客観を見極めつつで、芸の幅や奥行が豊かになる。
私も若い頃は様々なスタイルにトライしたが、気が向かない演奏にはストレスを感じた。
ストレスをかかえながらいくら頑張って演奏しても、聴いた人がリラックスし楽しんだりすることはない。
ストレスにはプラスとマイナスがあるそうだ。
遊びに向かう時、安全運転に気をつけるのはプラスのストレスだが、いやな仕事に向かう運転ならマイナスなストレスも増す。
最近は、上質の演奏をしようというプラスストレスは毎回あるが、マイナスストレスはなくなった。
マイナスストレスは全くフリー(ゼロ)です。・・・でも、時にずっこけてプラスストレスもフリーになる、『ストレス・オールフリーの亜土さんワールド(?)』にどうぞお立ち寄りください。