ぼやき漫才

40年余り前人気だったぼやき漫才『人生幸郎・生恵幸子』(じんせいこうろう・いくえさちこ)をユーチューブで観た。

関西の夫婦漫才で既に70歳は超えていたが、漫才ブームに乗って全国的な人気もあり、私は大好きな漫才だった。
もし関西の方だけしか分からない話だったらごめんなさい。
 
夫の人生幸郎は肩をいからせ手を振り上げ、時々の事件や世の理不尽をぼやく、それに甲高い声で妻の生恵幸子がつっこむ。
何といっても受けたのはヒット歌謡へのぼやきだった。
 
「私がぼやき始めたのが終戦直後、「リンゴの歌」、『赤いリンゴに唇寄せて…リンゴは何にも云わないけれど』て、リンゴがもの言うたら、果物屋うるそうて寝られんやろ!」
 
研ナオコの歌、『カモメはカモメ』て当たり前やろ!そんなもん楽団使うて偉そうに言うな!」
 
「歌詞聴いて腹立ったのが、松山ちはるの『窓』ちゅう歌。
『小さい部屋の窓から見える、空の青さは分かるけど、空の広さが分からない』て、当たり前やろ!お前何考えとんねん、長生きせーよ!
お前やろ、デパートのエスカレータの階段数えて一日送っとんの」
 
このようなぼやきが大受けで、当時ネタにされた歌手も話題になることで怒る人はいなかったそうだ。
 
さんざんぼやいて「責任者出てこーい!」と幸郎が声高に言い
幸子「出てきたらどないすんねん!」
幸郎「あやまったらしまいや」
幸子「何言うてんねん、このハナクソー!」
幸郎「かーちゃん堪忍」
その後、結びの口上を述べて下がるパターンが多かった。
 
あの時代は老若男女に受けた芸だったが、今は皆の共通認識としてのヒット曲の存在が薄い時代、この類の芸を観ることがない。
 
ジャズという音楽をやっていてありがたく思うのは、元々流行歌でありながら長い年月、色あせず魅力があるということ。
 
さて本日、その色褪せぬ魅力の水森亜土さんとトリオで、上野「アリエス」月例ライブ。