鉄板

昨日、銀座「スイング」北村英治カルテット、ゲスト:筒井政明Tp 白石幸司Cl。

筒井さんと白石さんは共に有名バンド薗田憲一とディキシーキングスのメンバーとしても活動されている。
北村さんライブには時折ゲストとして招かれるが、よく取り上げる曲目のアンサンブルを用意して、曲によってはクラリネット、トランペット、テナーサックスの重厚なハーモニーが彩りを添えてくれる。

北村さんのライブは、時にリクエストで予期せぬ曲を取り上げることもあるが、ほぼ毎回のように演奏する曲目も多い。

北村さんも、水森亜土さんも、定番によるお客様の満足度は高く、故にライブも常に多くのファンで満たされる。
定番曲は「水戸黄門の印籠」のようなおやくそくの満足にも近い。

私も定番曲はあるが、演奏する側としては同じ曲を何度やっても常に新鮮で、飽きることはない。

しかし、こんな極端な例もある。

昭和30年代初頭に、クラリネット鈴木章治さんが録音した「鈴懸の径」が大ヒット、当時は昼夜のライブ毎ステージでリクエストに応え、日に数回も同じ曲を同じアレンジで毎日、それが続いて徐々に演奏が苦痛になっていったそうだ。

このレコーディングにも参加したドラマー原田イサムさんも、「あの時期は毎日それを演奏しないとお客が承知しないかった。何千回演奏したか分からない。曲は良いけど、演奏することが苦痛だった」と話されていた。

最近、「定番」と同じような言葉で「鉄板」を耳にする。
鉄板は揺るぎなく硬いということなのだろうから、曲で言えばアレンジもきっちりそのままとか、だとすれば、ジャズ演奏においての苦痛は想像できる。

ジャンルは違えど、半世紀超えてなおビートルズナンバーの多くの鉄板を生き生きとあのクオリティーで演奏し続けるポール・マッカートニーは凄い。