コア

東京は晩秋から一気に冬に入ったような気音の変化

昨今、飲食店などのB.G.Mにジャズを使用するところがやたらに多い。
それがジャズライブに足を運ぶ人口に直結しておらず、あくまでもB.G.Mではあるが、これほど巷に流れているというのは、多分ジャズが「便利な音楽」なのだろう。

当たり障りがないと言うのか、何かお洒落でリッチな雰囲気で、特定の濃い色を感じさせないのだろう。
 
ジャズという音楽は、米国で多国籍を持った人々の中から生まれて更にグローバル化した。
だから、例えば米国のカントリーとか、メキシコのマリアッチ、その他ラテン、シャンソンカンツォーネなどに比べると、特定の色を濃く感じないところが便利なのだろう。
 
私が演奏家生活を始めた40年前頃、ジャズに濃い色を求めるコアなお客様も多かった。
演奏家として純粋に音楽的な意見や批評はありがたいが、中には独自の価値観を述べる方も多かった。
 
女性ヴォーカルに向って「もっと煙草を吸って酒を飲んで声が荒れるくらいがジャズに良い」などと、独自(というか全く見当違い)の価値観を述べる方。
 
「ジャズは黒人の音楽であって黒人らしさが感じられないとつまらない」という価値観を持つ人も多く、演奏家自身も演奏や歌に対して「黒っぽい」とか「白っぽい」などと仲間内の評価をしたもんだ。
 
こういう価値観が今では陳腐にさえ感じるだろうが、昭和の時代はこういったジャズにひとクセもふたクセも求めるコアな人も多かった。
ま、ジャズに限らず社会全体、右肩上がりの高度経済成長の熱気があった時代。

さて本日は、そんなあんな時代を超えて人々を魅了する水森亜土さん、そしてベテラン名手メンバーとのトリオによる月例ライブ、銀座「シグナス」に出演。