酒とバラの日々

小学生の頃、家にアンディウイリアムスが歌う「酒とバラの日々」のシングルレコードがあった。
ジャズのスタンダード曲となっているが、当時は洋楽のヒットソンングで家族も周囲の大人もジャズという意識はなかったと思う。

ジャケットはにこやかに微笑んだ歌手とピンク色の曲タイトル、英語の歌詞など分からず「酒」と「バラ」という単語から、随分ロマンティックな大人のラブソングに感じ、ライナーノートに映画音楽とあるので、甘い恋愛映画だろうと思い込んでいた。

その映画を上京後にテレビで初めて見て「えっ、こんな映画だったのか」とかなり意外だった。
甘い恋愛どころか、アルコール依存症がテーマで、主演のジャックレモンとリーレミックの二人が共に酒に溺れて人生を転落してゆく暗いストーリーだった。

この映画は1962年の制作だが、それよりも古い映画(タイトルも内容も忘れた)
に、"The days of wine and roses"(酒とバラの日々)という台詞があって、英語として古くからある言葉と知った。
調べると「19世紀英国の詩人アーネストドーソンが、過去の悦楽の日々を表現した言葉」とある。
何もかもが上手く行って有頂天だったあの頃が過ぎ、今が良ければ楽しい思い出だが、思い出すのも虚しいということもある。そんなあの頃が「酒とバラの日々」。

ヘンリーマンシーニの曲、ジョニーマーサーの詩、映画のラストに流れるこの歌が何とも寂しく聴こえた。

 酒とバラの日々は、子供がじゃれるように
 笑いながら走り去ってゆく
 草原の向こうのドアは閉まりかけて
 「二度と戻らぬ」と記されている

何とも寂しい世界だが、ジャズではミディアムテンポでスイングしたり、軽いボサノヴァでやることが多くあまり寂しく聴こえない、こんなところもジャズの良さかと思う。

さて、本日は「俺のフレンチ・イタリアン 青山」にレギュラートリオで出演。